信濃雪(長野県飯田市松尾明)

日本古来の大豆タンパク食品
凍り豆腐は、凍った豆腐をもどして乾燥させたもの。その起源は、高野山の小僧さんが冬の夜、外に置き忘れた豆腐が凍ったという説、長野・東北地方に伝わる凍み豆腐(豆腐をワラで編んで極寒の軒先に吊るし、凍結と日光乾燥を繰り返して作る)から普及したという説など、諸説あります。関西では高野豆腐、甲信越や東北では凍み豆腐など、地方によって呼び方も様々です。

高タンパクで栄養価が高く、カルシウム豊富で消化もよい凍り豆腐は、日本古来の健康食品。滋味あふれる大豆タンパク食品として、正食でも欠かせない食材です。市販品は水戻しを短縮して柔らかく煮上がるよう、昔はアンモニア、現在は重曹で膨軟加工した品が大半ですが、ムソーは膨軟剤不使用にこだわり、昔ながらの風味・食感の凍り豆腐をお届けしています。

生絞り豆乳から豆腐を作る
長野県飯田地方では、かつて農家が冬場の副業として凍り豆腐を作っていました。信濃雪もその流れを汲み、昭和26年、冷凍技術の発達を受けて年間を通じた凍り豆腐の製造を始めました。製造工程の前半は豆腐作り。まず国内産有機大豆を洗って水に浸け、細かく粉砕して「呉」を作ります。一般的には呉を煮沸してからオカラと豆乳に分離しますが、信濃雪は生呉の状態でオカラと豆乳を分ける「生絞り」。歩留まりは悪いけれど、豆乳に大豆の皮や胚芽が入らないので渋味や苦味が残らず、味の濃い豆乳ができます。高野豆腐メーカーで生絞り製法を守っているのは、今では信濃雪だけです。生絞りの豆乳を煮沸し、にがり(塩化マグネシウム)を打って凝固させ、大きな箱型に盛り込んで、重しをかけて脱水します。重しをだんだん重くしていき、最初は60cmだった厚さが約7.5cmに。縦横1mの大きな固い豆腐です。

じっくり熟成、丁寧に乾燥
ここからが凍り豆腐ならではの工程。大きな豆腐を切断して凍結します。表面を緻密に凍らせてなめらかにするため最初はマイナス8度まで急冷し、芯ができないよう徐々にマイナス5度まで上げます。全体が凍結したら、氷点下の熟成室(母屋)で約20日間熟成させます。この期間に大豆のたんぱく質がアミノ酸に変わって独特の旨みとなります。熟成が終わったら水のシャワーで解凍し、脱水します。一般的にはこのあと重曹のシャワーを通して膨軟加工しますが、ムソーの品には行いません。各商品に合わせて切断後、乾物に仕上げる乾燥工程に入ります。割れないように、光沢と粘りが出るように、まず90度の乾燥機で水分を蒸発させ、次に調湿乾燥を1日半、さらに2日かけて常温に慣らして完成です。丸い大豆が四角い凍り豆腐になるまで約1ヶ月。手間ひまかけた伝統食材を、ぜひ毎日の食卓に。

前のページへ 次のページへ
2024年11月号へもどる