~南茅部の海の恵み「真昆布」~
昆布の主な産地は北海道です。特に高級品として知られる順に並べると、真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、長昆布となります。
真昆布は主に津軽海峡から噴火湾沿岸で採れる道南産の昆布。中でも南茅部地方(現在は函館市)に産する「白口浜真昆布」は最高級の品質で知られ、蝦夷・松前藩の時代から宮廷や幕府に献上されていました。北前船で大阪へ運ばれた真昆布は、大阪のだし文化を支えてきた立役者です。
道南伝統食品協同組合は、南茅部の漁業者・加工業者が中心となって1991年に立ち上げた組合です。その看板ともいうべき天然真昆布の不漁が7年続き、水揚げ量は1/100ほどに激減しました。希少品となった「函館黒口浜産・天然真昆布」は在庫なくなり限り終了予定。“だしや昆布締めは真昆布でなければ”という方のために、1年養殖物の「北海道函館産・真昆布」も販売しています。
~家庭用の万能昆布「日高昆布」~
いっぽう、家庭用の万能昆布として親しまれているのが、太平洋側の日高沿岸で採れる日高昆布です。早く煮えて非常に柔らかくなるので、昆布巻き、おでんの具、煮物などに最適です。だし昆布としてはコクのあるだしが取れますから、家庭料理に惜しみなく使えます。煮崩れしにくいので、だし取り後の昆布を煮たり、佃煮にしたり…家計にもやさしいのです。
道南伝統食品の「日高昆布」は、日高地方の荒磯から収穫された天然物です。資源確保のため、漁期は7月から9月末頃まで。湾に守られ波おだやかな道南と違って、太平洋の波は荒いですが、「日高の漁師さんは時化(しけ)の日でも、戻ってから天日干しできそうな空模様なら、果敢に船を出します」と道南伝統食品の成田幸大さん。漁師と家族2~3人が乗り込んだ小船が競って漁場へ向かいます。揺れる船から身を乗り出し、マッカと呼ばれる二股の長い竿で海中の昆布を絡め取る昆布漁は、海の男の“力と技”の見せ所です。採った昆布は船から陸に揚げて、家族総出で天日干しにかかります。雨などで干し上がらないときは室内乾燥で補います。干し上がった昆布を一枚一枚のし、形をととのえて出荷するまでが漁師の仕事。組合はそれを買い付けて商品化します。
~昆布を毎日の食卓に~
「不溶性食物繊維が豊富な昆布は、日本伝統の健康食材。だしを取るだけでなく、昆布そのものも毎日食べていただきたいです」と成田さん。地元の漁師のお母さんたちは、煮魚などの落とし蓋の代わりに昆布で蓋をして煮るそうです。「魚の臭みも取れて、ニシンなどの青魚やカレイや地の魚などには好相性。昆布にも魚の味が染みておいしくなります。昆布が豊富な産地ならではの料理です」とのこと。ぜひお試しください。