栽培から加工まで一貫生産
日本の伝統食の極みであり、正食でもよく使う梅干について、ムソーでは創業当初から一貫して無添加・伝統製法にこだわってきました。「有機・梅干」の塩分はしっかりと18~20%あり、酸っぱい&しょっぱい、昔ながらの味です。
その一方で、塩分が気になるお客様から「減塩タイプの梅干がほしい」というお声をいただいていました。梅と塩、そして赤しそだけで漬ける伝統製法で塩味控えめ。この難題に挑戦したい!と手を挙げたのが、深見梅店の四代目梅干職人・深見優さん(38才)です。
深見梅店は創業1940年の梅干専門店です。2009年からは自社農園で有機梅やしその栽培も開始。今回の塩味控えめの梅干は、その有機梅と有機赤しそを使用し、栽培から加工まで一貫して深見梅店が行います。
この町を、いつかオーガニックの梅の郷に
深見さんの有機梅園は、熊野古道の玄関口、人里離れた山頂に近い斜面にあります。「ここなら周囲から農薬飛散の心配もない。慣行栽培の梅は斑点や傷を避けるために農薬多用が常識で、梅農家は孫を梅の木に近づけません。除草剤がこわいから」。周囲の反対を押し切り、有機栽培に踏み切ったのも、家族が安心して食べられる梅干のためです。
深見さんの有機梅栽培は、自家採種の苗木づくりから。完熟落下した果実から大きい実を選び、健康な苗木に育てます。肥料は苗木段階でカニガラなどの土壌改良剤を施すだけで、定植以降は化学肥料はもちろん、有機肥料も使いません。「雑木林の落ち葉が栄養分。ミミズやモグラがたくさんいますよ」。農薬を一切使わない梅園に、大きなクモやムカデも、近所の幼稚園児も遊びにきます。「生まれ育ったこの町が、いつかオーガニックの梅の郷になることを夢見ています」。
脱塩せず、添加物も使わない減塩梅干
6月、樹上で完熟して自然に落下した梅をネットで受け、朝一番に拾い集めます。皮が薄く肉厚でジューシーな梅干を作るには、鮮度が命。すぐに水洗いし選別して、梅と塩(オーストラリア産天日塩)を交互に入れます。ここからは減塩梅干の大敵、酵母菌(カビ)との闘いです。
市販の減塩タイプの梅干は、梅を塩分18~20%で漬けた後、水や湯に浸けて脱塩し、失われた風味を人工甘味料やクエン酸で補った上で(調味梅干)、保存料やアルコールで保存性を高めた品が多いのです。これに対し、ムソーが求めたのは「脱塩せず、添加物も使わない減塩梅干」です。
深見さんは試行錯誤の末、しっかり水洗いした梅を塩分10%で漬けて、独自製法でカビが発生しないように漬け込みました。すると梅酢がしっかり上がり、酵母菌の出る幕はなし。その後ゆっくり天日干しした「有機白干し梅」と、同じく深見さんが栽培加工した「有機もみしそ」を、食品専用の濾過フィルターで酵母を除去した「うすしお有機梅酢」に約2週間漬け込んで、塩味控えめ(10~15%)の梅干ができました。
完熟した果肉たっぷりの南高梅と、やわらかい小梅の2種類。賞味期限はどちらも6ヵ月です。