大黒屋(山口県宇部市西岐波)

~山口特産、大根の寒漬~
寒漬(かんづけ)は、山口県の伝統的な大根の漬物です。創業大正元年・大黒屋の田村亮介さん(41才)によると、戦国時代、大根を海水に浸けて寒風にさらし、干し芋のようにしたものを「寒漬」と称して携行した、という伝承があるそうです。山口県南西部は瀬戸内海に面した温暖な気候ながら、雨が少なく、冬は乾いた冷たい風が吹き下ろし、大根を干し上げるには絶好です。昔は各家庭で作られ、寒風にたなびく大根が冬の風物詩でしたが、そのままでは食べられないため、調味したものが寒漬として売られるようになりました。

~叩いては干し、じっくり熟成~

大黒屋の「有機寒漬」は、山口県産の有機大根を使用した寒漬です。12月上旬に収穫して約1ヵ月塩漬けした後、大根にひもを通して寒風で干し、半干しの大根を叩いて伸ばして干して…を繰り返します。「叩き伸ばす理由は、平らにして空気を抜いてぎっしり漬け込むことで熟成中のカビを防ぐ。昔の人の知恵ですね」と田村さん。約3ヵ月かけて干し上げた大根を一本一本丹念に漬け込み、重石をして半年以上熟成させると、独特の飴色と熟成の香り豊かな寒漬の完成です。これを薄切りし、白いりごまと調味液(有機砂糖、有機しょうゆ、食塩、有機みりん、有機酢)に1週間ほど漬けて「山口特産 有機寒漬」が出来上がります。カリカリの食感、甘じょっぱい味付け、熟成の香りが残る有機寒漬は、とにかくご飯が進む味。カレーに添えても合います。田村さんの一押しはクリームチーズと合わせる食べ方で、地元の居酒屋で人気の由。

~ほのかな酸味の高菜漬~

高菜はアブラナ科の葉野菜で、カラシナの一種。主に漬物に使われ、野沢菜、広島菜とともに“日本三大漬け菜”として知られています。「有機たかな漬」の原料の有機高菜は、寒漬の有機大根と同じ山口県の契約栽培農家のものです。漬物向きに株が大きくなるのを待って3月下旬に収穫し、洗わずにそのまま塩とウコンで半年以上漬け込み、発酵熟成させます。「ウコンは色を良くするために伝統的に使います。うちの高菜漬は下漬け期間が長いので、高菜独特のピリッとした辛みが薄れて、どなたにも召し上がりやすい風味になります」。発酵熟成した高菜を洗い、調味液(食塩、有機砂糖、有機米酢)に3日ほど漬けます。調味液の食塩は、ムソーが定めたメーカーブランド取り扱い指針に沿って、並塩からメキシコ天日塩(しおまる)に変更していただきました。

乳酸発酵によるほのかな酸味、塩辛くないさっぱりした味。刻んでご飯のお供のほか、炒飯やパスタの具に最高です。長い葉は20~30cmもありますから、おむすびを包むのもおすすめです。

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