別所蒲鉾店(島根県出雲市大社町)

~我が子のための無添加が出発点~
出雲大社で知られる大社町は、日本海の海の幸に恵まれ、昔から蒲鉾作りが盛んな町。別所蒲鉾店の竹並一人さんも蒲鉾屋の三代目に生まれ、21歳で家業を継ぎました。
 当時の食べものは食品添加物がいっぱい。子どもが生まれた竹並さんは「娘たちに自信を持って食べさせられるものを」と切望しました。原材料まで調べ上げ、徹底的に吟味した材料で一から作れるのは…自分にとって練り製品しかない。こうして別所蒲鉾店の無添加練り製品作りが始まりました。
 納得のいく原料の探索、固まりにくい無リンすり身との格闘、素材の味を壊さない味付けなど、数年がかりの試行錯誤の末に、現在の無添加製造パターンを確立。その情熱と行動力、どこか憎めないヤンチャぶりから“出雲の若大将”と呼ばれた竹並さんも還暦を越えましたが、「商品開発も含めて、まだまだ面白いことをやりたいねぇ」と意気軒昂です。

~こだわりの無リンすり身で作る~
祖父の艶一郎さんの蒲鉾は、大社港に揚がる豊富な地魚が原料でした。しかし、山が荒廃して海にミネラルが流れなくなるなど自然の生態系が崩れ、漁師の高齢化も進んだ結果、漁獲量は年々減少。現在、別所蒲鉾店では、北海道産のスケトウダラや、地元、山陰又は九州で水揚げされた新鮮な地魚(飛魚、鯛、鯵、サワラ、マダラ、のどぐろなど季節の魚不特定)などの国産魚を原料とした国内製造の魚肉すり身を主原料としています。一部商品には外国産船上加工すり身も使用します。各魚種の特性やうま味に応じ、上記のすり身の中から製品に合わせた魚種を選び、数種を混合して使用しています。季節や漁の状況等により使用する魚種は変動します。地魚すり身の一部は、自社で鮮魚を買い付け・自社製造したすり身も使用します。
保水や弾力増強剤として一般魚肉すり身に使用されている食品添加物「リン酸塩」は使用しません(ちなみにリン酸塩はキャリーオーバー(加工助剤)とみなされ、原材料欄への表示義務なし)。リン酸塩を使用しないことで、原料の善し悪しが直接製品に反映するため、鮮度の良い原料の調達が不可欠で、一番気を遣う部分です。冷凍すり身をカットし、最新の撹拌機で撹拌したら、日本の海水を釜で炊いて仕上げた海水塩を入れ、ビートグラニュー糖、本みりん、魚醤、昆布と鰹のだしを加えてさらに練り上げます。基本の生地はこれで完成。板にのせて熟成させて蒸せば無でんぷんかまぼこに。基本の生地に馬鈴薯でんぷんを加え、そのまま蒸せばつみれやはんぺん、棒に巻きつけて焼けば竹輪や野焼き、菜種油で揚げれば天ぷらになります。

~3年かけて開発したおでん~
レトルトの「味自慢!!出雲おでん」は常温で保存でき、温めるだけで召し上がれる商品です。「加熱温度と時間、具の内容と厚さ、袋の形状などを、保存性とおいしさが両立するよう調整し、完成するまで3年かかりました」とのこと。練り物と卵・大根・こんにゃくなど合計8種8個と、昆布と鰹の風味が生きた自社開発のおでんだしを充填し、仕上げます。おうち時間が増えたせいか、別所蒲鉾店でも冷凍需要が特に伸びている由。冷凍の「おでん種セット」も、今シーズンご注文が増えそうです。

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