庄分酢(福岡県大川市榎津)

~酢造り300年の伝統を受け継ぐ~
寛永元年(1624年)、高橋家の初代清右衛門が筑後国久留米藩の大川・榎津に移り住み、二代四郎兵衛が造り酒屋を興しました。酢は酒の発酵から生まれるもの。その流れから、四代清右衛門が宝永8年(1711年)酢造商いを始めました。これが庄分酢の始まりで、以来300年、伝統的な製法(静置発酵)を守り、昔ながらの酢を造り続けています。
高橋家には代々引き継がれた家伝書があります。庄分酢を代表する「玄米黒酢」は今もその製法に則り、年に二回、土中に半分埋まった大きな甕(かめ)に仕込み、発酵・熟成に時間をかけて造ります。
「変えてはいけない伝統を守りながら、今の時代に合ったお酢の届け方、使い方を提案したい、と試行錯誤中です」と話すのは、15代目修行中の高橋清太朗さん(35才)。毎日の生活に手軽にお酢を取り入れられるよう、お酢ドリンクやビネガーサイダーなど新商品の開発にも力を注いでいます。

~100%りんご果汁から「りんご酒」を造る~
有機アップルビネガーも庄分酢の伝統を守り、昔ながらの静置発酵で醸造した純りんご酢です。一括表示の原材料は有機りんご果汁のみ。造り方を清太朗さんにお聞きしました。
有機りんご果汁の産地はトルコ、アルゼンチン、ニュージーランドなどです。まず、りんご果汁に蔵で守ってきた生きている酵母を加え、アルコール発酵を促して「りんご酒」を造ります。この際に醸造用アルコールなどを添加する製法がありますが、有機アップルビネガーでは一切添加しません。りんご果汁の糖分が発酵によってアルコールに変化するのを見守り、1か月ほどでりんごの甘みがなくなれば、りんご酒の完成です。

~蔵付き菌を浮かべ、静置発酵で「りんご酢」に~
次に、りんご酒に酢酸菌と少量の有機りんご酢(種酢)を加えます。この時に用いる酢酸菌は、庄分酢の蔵で300年活き継いできた蔵付き菌。仕込み中の酢の表面に張った酢酸菌の膜をすくい、りんご酒の表面にそっと浮かべて、かき混ぜずにそのまま置き、酢酸菌の力だけで酢酸発酵させます(静置発酵)。「この酢酸菌膜が、私たちの宝物。つねに酢を仕込み続けているからできる製法です」。
静置発酵では、仕込み液の表面をおおう酢酸菌膜が空気に触れて発酵が起こり、発酵熱から生まれる対流で発酵が進むので、発酵期間は2~3ヵ月と長くかかります。「仕込み液に空気を送り続けて攪拌して造る全面発酵に比べて手間も時間もかかりますが、あえて静置発酵を続けるのは、酸味がやさしくまろやかになり、おいしいお酢に仕上がるから」と清太朗さん。
二段階の発酵を終えたりんご酢は、蔵の中で数ヶ月熟成させ、ろ過を経て「有機アップルビネガー」としてお手元に届きます。まろやかな酸味をお楽しみください。

前のページへ 次のページへ
2022年5月号へもどる