福池和由さん(徳島県鳴門市鳴門町)/宝海草(神戸市西区伊川谷町)

激しい潮流に揉まれて育つわかめ
淡路島と四国東北端の間を流れる鳴門海峡の潮流は、世界の三大潮流のひとつに数えられ、特に3月から4月にかけての大潮の頃には潮の流れが時速20km以上にもなり、直径20m以上の大きな渦潮が見られます。ここで育つ「鳴門わかめ」は、激しい潮流に揉まれ、色も風味も食感も天下一品です。わかめ漁最盛期の3月、ムソーの「鳴門産塩蔵わかめ」の生産者・福池和由さんは早朝5時半から海へ出て採ったわかめを陸に揚げ、浜で湯通しします。

湯をくぐり、鮮やかな緑色に
茶褐色の原藻わかめを一抱え、熱く沸騰した海水の釜に入れると、翡翠のような美しい緑色に。湯気と磯の香りの中、ぶ厚い茎が茹で上がるのを見計らって冷たい海水に移し、急冷しながらきれいに洗えば、鮮やかな緑色の新わかめの誕生です。

湯通しした新わかめは保存のため、すぐに下漬けの塩をまぶし、一日置いて水切りします。こうして塩蔵したわかめの芯(茎わかめ)を取り、柔らかい葉だけを宝海草(株)に出荷。宝海草でいったん塩抜きし、赤穂の天塩で改めて塩蔵わかめに仕上げて出荷します。素朴ともいえる工程に、食品加工の原点を見る気がします。潮の流れに負けない80馬力の“えびす丸” に乗り、港から5分ほど走った沖に福池さんのわかめ養殖イカダがあります。「ここ大毛浜は鳴門の中でも渦潮に近いけん、潮に揉まれていいわかめができる。吉野川が運ぶミネラル分も大事」。海面近く格子状に張られたロープから、茶褐色のわかめが生え、海中でゆらゆら巨体を揺らしています。根元には分厚く固くぬるぬるした「めかぶ」がついていて、生きているぞと主張しているようです。

種苗から手塩にかけて育てる
わかめの養殖は春の種作りから。種苗を購入する漁師が多い中、福池さんは自ら種を採り苗から丈夫に育てます。昔から稲作で「苗半作(お米の出来の半分は苗で決まる)」と言いますが、海を舞台にしたわかめ養殖も同じことです。

5月中旬、丈夫で大きいめかぶを刈ってきて、海水の水槽の中で揉んで種(胞子)を採り、種糸を張った枠を浸けます。10月中旬になると幼芽が数mmに育ち、これが養殖用の苗になります。わかめの赤ちゃんが付いた種糸を2~3cmに切って均等にロープに挟み込み、11月中旬に沖へ運んで海中に吊るせば、海の養分と太陽の光をいっぱい受けて、翌年3月上旬から4月上旬、鳴門新わかめとして収穫されます。福池さんは75才で現役、「今日の昼は、わかめと穴子をシャブシャブにした。めかぶは茹でて刻んで酢醤油で食べよる、おいしいで」。私たちも若さを保つ“若布”を毎日いただきましょう。

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