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伊勢湾の冬の恵み「黒のり」
伊勢湾は、北部に木曽三川、南部に清流宮川をはじめとする河川を有し、山々から豊富なミネラルや栄養がもたらされる豊かな漁場です。豊富な栄養分を吸収して育った黒のりは香り高く、旨み、そして口に入れると広がる甘みが特長。三重県の冬を代表する海の恵みです。黒のり養殖漁場は桑名から鳥羽まで南北に広く分布。浅い漁場では海に支柱を立ててのり網を張る「支柱式」、沖や深い漁場では洋上で浮きとオモリとロープでいかだを作り、その中に網を張る「浮き流し式」で養殖します。ムソーの「御のり(板のり)」と「焼のり」の原料は、みえぎょれん販売が海域を問わずに厳選し、仕入れています。
味と香りを吟味して買い入れる
県内の生産者は82世帯、ほぼ夫婦単位で養殖と生のり加工に従事しています。夜明け前に網から生のりを摘み、真水を加えてミンチにし、板状にして水切り・温風乾燥して「新のり」に加工し、漁協に納品するまでが漁師さんの仕事です。各漁協が出品した新のりを、三重県漁連のり流通センターに集めて入札します。みえぎょれん販売の“目利き”が光るのは、この入札会です。「のりの等級は見た目(色調や形状)で決まります。味や香りは等級だけでは判断できないので、入札会場の電熱器で新のりをあぶって試食し、吟味したものを買い入れます」とみえぎょれん販売の小林将史さん。「この道10年ですが、のりは奥が深いです」。伊勢湾でも近年はのりの成長に必要な栄養が足りず、本来の黒色が茶色や黄色になる「色落ち」が漁師さんを悩ませています。色落ちしたのりは評価されず、売り先がないのです。昔のように豊かな伊勢湾をとりもどすために、地域をあげて模索が続いています。
炙りたてを、楽しんでみませんか
こうして仕入れた新のりを、熱風で火入れ乾燥した商品が「御のり(板のり)」。板のりを、さらに遠赤外線で焼加工した商品が「焼のり」です。板のりはそのままでも召し上がれますが(関西では板のりを巻き寿司に使う食文化があります)、軽く炙って焼のりにすると、きれいな緑色になり、より香りが引き立ちます。「炙りたてののりの風味は、パンに例えるなら焼きたてのトースト。製品化された焼のりは手軽で圧倒的に人気ですが、やはり焼き冷ましです。電熱器がなくても、オーブントースターで簡単に炙れますよ」。ごはんが炊けたら、板のりを食べる分だけさっと炙って、パリパリのところに上等のお醤油をちょっとつけて、お箸で巻いて一口で。ひと手間かけて味わう幸せ、お試しください。