金正食品(奈良県御所市宮戸)

~ ロングセラーの灯を守りたい ~
数十年にわたって手作業で製造し、機械が古くなってきたムソーの乾麺の焼そば。ムソーには冷蔵の「むし焼そば・ヒカリソース付」があるので、乾麺はそろそろ終了でよくないか、社内で意見を聞きました。すると「ゆでて戻す手間がかかっても、乾麺のほうがおいしいと思う」「冷蔵のむし焼きそばよりも、断然私は乾麺派!」「乾麺は賞味期限が長いから、買い置きできます」「全粒粉入りというムソーらしさを守りたい」「あの無骨なパッケージもいいのよね」と、終了を惜しむ声が続々。この子、そんなに人気者だったの!ならば、リニューアルしてくれるメーカーさんを探さなくては。
国内産小麦粉と食塩だけを使って、かんすいを使用せずに製麺し、ノンフライで乾燥させる焼そば麺。そんな“昭和っぽい仕事”ができるメーカーが、今時いるとは思えませんでしたが…灯台下暗し。「国内産・はるさめ」「国内産・くずきり」の協力工場・金正食品が手を挙げてくれました。葛城山の麓、御所市で地場産業の春雨製造を続ける金正食品は、もともと昭和30年頃に素麺と焼そば作りからスタート。現在も、少量ではありますがノンフライの焼そばを製造していたのです。  金正食品の中林弘欣さんに相談し、試作を重ねること一年。従来品に負けないムソーの「焼そば」が完成しました。

~ ノンフライの乾麺焼そば ~
原材料は、国内産小麦粉と国内産全粒粉と食塩だけです。食塩は従来の天日塩から、青い海のシママース〈沖縄の塩〉に変更しました。かんすい・化学調味料及び添加物は使用しません。麺をほぐすためにも乾燥のためにも、油は使用しません。製造工程はシンプルです。まず小麦粉と全粒粉を撹拌し、食塩を溶いた練水を加えて(このタイミングが職人技)生地を作ります。生地の塊を、鋳物の圧延機に5回通して2mm mほどの薄さの麺帯に延ばしたら、2mm幅の切り歯で麺線にし、1人前の長さにカットします。トンネル状の蒸し機で5分ほど蒸したら、手でほぐし、1人前ずつ金属製の枠に入れて温風乾燥して仕上げます。従来品は180gのブロックで2食分でしたが、小家族化に合わせて、リニューアル品は90g×2個入りです。

~ お鍋の“しめ”にも ~
国内産小麦の風味が味わえる、もちもち食感が魅力です。熱湯で約5分ゆでて冷水にさらし、よく水切りしてから、野菜と炒め合わせて焼そばに。ソースは付いていないので、お好みのソースや手作りネギ塩、にんにく醤油などで味付けしてください。秋冬は鍋物の“しめ”に、春夏はサラダ麺に。一年じゅう活躍すること、間違いなしです。

前のページへ 次のページへ
2021年11月号へもどる