すいてんの後藤和明さんは、長年(28年!)畑を周ってきましたが、無農薬でキャベツを育てている人は少なく、ごくまれに出会えても、キャベツはアブラナ科の野菜の中で最も虫の食害がひどくて商品にならないのが常でした。「無農薬の生産者がいたとしても、多品目栽培の中で少量の供給しかできない。私の2年前までの常識でした」と後藤さん。
ムソーとの取り組みを契機に、無農薬栽培・有機JAS青果物を改めて開拓する中、出会ったのが萩原博さん(60才)。「太平洋の潮風と日焼け顔が似合う男。私の一学年先輩、半分同じ匂いがする昭和の男です」。銚子市は千葉県の最東端にあり、東と南を太平洋・北を利根川に囲まれた海洋性気候によって、冬は暖かく夏は冷涼。ミネラルたっぷりの潮風も野菜づくりを応援してくれます。実際、銚子の春キャベツ生産量は千葉県内一位。これは農薬に頼り、生産量を優先した結果でもあります。
萩原さんが約30年前、無農薬・無化学肥料に切り換えたきっかけは、同業者の中に農薬による健康被害が出たことです。動物性堆肥も使わず、籾殻と米ぬかを中心とした独自配合の有機肥料を使用し、「ミネラルアミノ酸微生物農法」を実践。化学肥料に頼らずに土づくりしたおかげで、地元でただ一人、春まで大根そしてキャベツの無農薬栽培に挑み続けています。