富谷亜喜博さん(千葉県山武市)

富谷亜喜博さん(61才)たちが「最近力を入れているのはコレ」と紹介してくれたのは、ミニ白菜・ベビー白菜の名で知られる小ぶりの白菜。大型の白菜の半分くらいの大きさで、近年少しずつ出回ってきた品種です。「使い切りやすいし、産毛がほとんどないから口当たりの滑らかさが全然違うんだよね」と、収穫が始まったばかりのミニ白菜を見せてくれました。

触れてみるとぴんと張りのいい葉ざわり、つるっとした触感。葉の上の方も白菜特有のざらっとした感じがなく、おいしそうな葉っぱ。「白菜はどんな料理にも合って使い勝手はいいけど、大きさが課題だったので、この品種ができてから、これだ!と、グループ全体で栽培に当たっている」とのこと。

グループは1988に発足し、富谷さんはグループ長も務めた方です。発足当時は最年少でしたが、今では30年以上有機農業に邁進する大ベテラン。当時を振り返り「これは実験なんだ。2~3年で解散してしまうだろう、と考えていた」と言います。販売のあてもないのに、いろんな農家を説得して作付けをしたため、さぞかし無謀に見えただろう、と笑っていました。

活動を続ける中、消費者の間でも安全な野菜を求める気運が高まり、漠然と感じていたことが徐々に確信に変わり、これからは有機農業に挑戦していくべきと悟ったそうです。その後は先達の知見を取り入れ、街路樹の枝など端材を中心に腐植率の高いたい肥作りなどの工夫をし、ふっかふかの畑を作り上げました。 「今も勉強の毎日だし、何も有機だけが絶対的価値とは言い切らない。農家は同じ食べ物を作る仲間と思い、少しでもこういった栽培に興味を持ってもらい、切磋琢磨できる仲間を増やせればいい」。還暦を迎えた富谷さんですが、ミニ白菜のようにはりのある若々しい笑顔で語ってくださいました。

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