昨年は格別の御厚情を賜り、厚く御礼を申し上げます。

2025年4月から半年間開催された日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、スタート前の今一つ盛り上がりに欠けていた状況から、閉幕が迫るにつれ大変な賑わいとなり、最終的には2,500万人以上の来場者が世界各地から集まり、盛況のうちに終わりました。関西地区に寄与した経済効果は非常に大きかったと思いますが、万博の影響による関西エリアの物価高は身近な生活支出や食品消費にとって向かい風になったと感じます。
万博に限らず予測や仮説を立てながら環境に適応していくことは事業者として、また一個人としても大切ですが、人がその時その時の“欲”によってどう動くか予測するのは実に難しいことを教えられます。万博跡地では2030年秋頃の開業に向けて、統合型リゾート(大阪IR)の施設本体の建設が始まりました。観光産業による経済効果を見込んでの一大プロジェクトですが、私たち日本で生活する人々の志向がこれから更に問われる気がします。優先すべきは経済成長なのか国際競争力なのか、はたまたエンターテイメント性なのか。経済の潤い、楽しみや喜びは私たちにとって大切な欲求の一つですが、諸外国で繰り広げられる紛争を見れば、最も優先すべきは安心で安全な生活環境だと思うのは私だけではないでしょう。
戦後80年となった2025年は、過去を振り返る報道や複数の書籍発行、映画でも平和の在り方が改めて問われました。戦後11年目に結成された日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)は将来の平和の在り方を強く提言し続け、2024年12月にノーベル平和賞を受賞されました。記憶を受け継ぎ未来へつなぐ運動が国際的に理解され評価された受賞でした。平和であり、安全であり、健全で健康な生活、食べ物を奪い合うような争いのない世界が今年こそ実現するよう願ってやみません。
さて、「新米」と呼ばれる時期はそろそろ終盤ですが、今年度の米価格は予測を更に超えるスタートとなりました。過去から続いた農業(稲作)政策の歪み、習慣的な商流や消費者側の低価格感など、いくつもの要素で表面上は成り立っていた国内のコメ市場が一昨年より転換期を迎えています。供給と市場バランスが崩れると状況は大きく変化し簡単にはもとには戻れませんので、2026年以降も数年間は需要と供給のアンバランスが続き、価格は安定しないと予測されます。オーガニックへの熱意が高い有機米生産者も市場状況に暫く翻弄されることと思われますが、商品価値に見合った商品提供を弊社も一緒に取り組んでいきたいと思います。またお米に限らずオーガニック農作物の供給と獲得はいっそう大きな課題となっています。国内のオーガニック市場は緩やかに成長していますが、天候不順による収穫不良や新たな病気や害虫問題、また生産者さん自体の超高齢化と人手不足は解決方法が簡単に見いだせない状況です。弊社は主力穀物である有機栽培の米、大豆、麦の安定確保に数年来取り組んできました。将来に向けた国内オーガニック市場の成長と食糧自給率アップの一助となれるよう、いっそう注力してまいります。
万博で空飛ぶ自動車が披露され実用化が数十歩進んだように、生活環境の利便性はこれからますます高まり、生活手段も変わっていくでしょう。事業環境では効率化や生産性の向上が求められますが、私たちの「健康」と「食」の関係は効率でははかれない結びつきがあります。将来への期待と安心感はロボットやAIではなく、人が創出し繋いでいくものだと信じています。2026年はこれまで以上の営業活動や情報・サービスのご提供、また商品開発や物流サービスの向上に取り組み、皆様のお役に立てるよう社員一同邁進いたします。2026年が皆様にとって素晴らしい一年でありますように祈念いたしますとともに、変わらずご愛顧、ご支援を賜りますようお願い申し上げまして年頭のご挨拶とさせていただきます。
ムソー株式会社
代表取締役 出口 裕起