りんねしゃ(愛知県津島市立込町)

家庭内農薬にNO!を

蚊遣り(かやり)をご存知ですか。蚊を追い払うために草木の葉や木くずなどをいぶしたり香を焚いたりすることで、徒然草にも記された夏の風物詩です。蚊遣りに代わる工業製品として日本で1890年に発売されたのが天然の除虫菊(ピレトリン)を使った蚊取り線香。しかし第二次世界大戦後、蚊取り線香やその後の殺虫スプレー、液体電子蚊取りなどには殺虫効果が高い合成ピレスロイドが使用され、現在に至ります。りんねしゃ代表の飯尾純市さんは、食や環境、暮らしの安全・安心と向き合い、共同購入運動に取り組む中で、家庭内農薬に疑問を持ちました。ケミカルな蚊取り線香による頭痛に悩まされて、天然の除虫菊を主成分とする虫除けの開発を決意。日本には除虫菊の栽培農家がいないため、かつて日本人から栽培技術を伝授された中国の農家と契約栽培して1997年に初収穫、2001年「菊花せんこう」の製造販売にこぎつけました。ムソーとはその当時からのお付き合いです。

現代の蚊遣り、菊花せんこう
箱の蓋には除虫菊の絵と「アロマで防虫 菊花せんこう」。その意味を、りんねしゃ二代目の大島幸枝さんにお聞きしました。「一般的な医薬部外品の蚊取り線香は、ピレトリン・合成ピレスロイドの成分は確実な殺虫を目的にして高濃度に定められています。それに対して菊花せんこうは総ピレストリン0.1%程度で分類は“お香(アロマ)・雑貨品“です。天然のピレトリンでも大量に摂取すれば体に害があると私は考えています。強い殺虫力は無くても忌避効果があれば十分だし、人にも他の生き物にも優しい線香がいい。それに、あらゆる虫を殺したら野鳥の餌もなくなります」。使用原料は、除虫菊粉末・除虫菊粕粉、タブ粉、でんぷん、木粉、薄荷、陳皮です。りんねしゃが原料を持ち込み、和歌山県の工場で製造しています。合成着色料や染色剤、農薬等を添加していないので植物粉末そのものの色。着火すると昔ながらの素朴な植物の香りが広がって、現代の“蚊遣り”を思わせます。

社会課題の解決に貢献したい
りんねしゃは北海道紋別郡滝上町に自社農場を構え、日本で栽培が激減した除虫菊と和種薄荷「あかまる」の栽培を復活。この希少な北海道産除虫菊と薄荷は、菊花せんこうと「菊花の防虫スプレー」の原料の一部に使用します。最新プロジェクトの舞台はアフリカ・ケニアです。ケニアの除虫菊は世界最高品質といわれ、かつて世界最大の生産国でしたが、合成ピレスロイドの普及と独占公社のミスマネジメントにより1990年代後半から急激に衰退。大島幸枝さんの弟・飯尾裕光さんは2019年からJICAの支援を受けて現地の除虫菊栽培農家グループと交流し、同国の除虫菊産業再興を支援しながら、菊花せんこう原料の自社調達と製造連携を目指しています。「これからの社会にとって菊花せんこうが単なる消費商品ではなく、社会課題の解決に貢献できる商品となれるように」と幸枝さん。りんねしゃの思いが世代を超えて伝わりますように。

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